【最新】スマートフォンはもう売れない?移り変わる中国人の消費活動
新型コロナウイルスの蔓延により、中国では消費活動が急激な変化を迎えています。
大人気だったザリガニが売れなくなり、コーヒー市場が拡大。
スマートフォンが売れず、電気自動車が売れる。
口紅を一本買うよりも金を買う。
これらの逆行する消費現象の背後には、いったいどのような論理があるのでしょうか?
ザリガニ不況とコーヒー市場から見える中国の”食”市場
ザリガニはなぜ売れなくなったのか?
中国で「屋台料理の王」と呼ばれていた”ザリガニ”。ピーク時には500万人以上がザリガニ事業に従事し、ザリガニは巷の「财富密码(富の暗号)」でした。
麻辣、鮮香、十三香、ニンニク味、原味、多くの味付けがあり、東西南北どこの地域でも受け入れられる大人気の料理となりました。
また、中国で大人気のグルメドキュメンタリー番組『舌の上の中国』の陳暁卿監督はこう言っています。
「ザリガニは最高の社交的な食べ物です。食べている間に携帯電話をいじることができないからです。」
中国人にとってザリガニは、”社交”の象徴でもあるのです。
しかし今、ザリガニレストランの倒産ラッシュが始まっています。2021年末、中国でのザリガニレストランに店舗数は5万8000店で、2020年より10.4%減少しました。
コロナウイルスで厳しいロックダウンが行われた都市では、以前のような”社交”の場が減り、また、自宅で一人ザリガニを食べようという人もいません。
中国では空前のコーヒーブーム
ザリガニ市場の衰退に反して、コーヒーは以前よりもよく売れるようになりました。
現在、コーヒー業界は越境で最も敷居が低く、利益を生みやすい市場であると考えられており、あらゆる業界のトップがコーヒーを売り始めました。
今年、「李寧」、「中石油」、「中石化」、「同仁堂」、「中国郵政」、「天津狗不理包子」、また、スマートフォンで有名な「华为(ファーウェイ)」など大手企業が続々とコーヒー分野への進出を発表しました。
今年618年、”即席高級コーヒー”で有名な「永璞珈琲」の前売り額は前年同期比100%超増加した。また、日本帰りの留学生が企業した「隅田川珈琲(TASOGARE)」の今年第1四半期の業績は前年同期比200%増加しました。
いつの間にか、コーヒーはコカコーラ、ミルクティーを引き継いで、最も人気のある飲み物になりました。
デロイト中国の「中国現代型コーヒー業界白書」と中信証券のデータによると、2020年の1、2線都市の1人当たりの年間コーヒー消費量はそれぞれ326杯、261杯に達し、日、米、韓などの成熟したコーヒー市場の消費水準に近づいています。
10年前、1杯30元以上のスターバックスを飲むことは中国人にとって庶民的ではありませんでしたが、現在、「瑞幸門店」店舗数はスターバックスよりも多く、生ココナッツラテ1杯15元程度で手に入ることができ、コーヒーを飲むのは、コカコーラを飲むのと変わらない消費となりました。
また、今回のコロナウイルスの蔓延で中国では健康意識が高まっており、カロリーの少ない珈琲を好んで飲む人が増えたこと、また、「996(朝9時から夜9時、週に6日働く)」と呼ばれる過酷な労働環境において、眠気覚ましの一杯としてもコーヒー需要が高まっています。
预制菜(チン飯)が食卓を独占
中国では現在、「预制菜(温めるだけで食べられる既成食品)」が大ブームになっています。「预制菜」は疫病後に盛んになった新しい経済形式で、さまざまな食材を配合し、完成品や半完成品として加工し、簡単に加熱することで食べることができる非常に便利な食品です。
お弁当型のもの、単品型のものなど様々な「预制菜」があります。少し手の込んだものを作りたいときは下味調理済みの真空包装された肉や魚を買うことも可能です。
招商証券は研究紙の中で、中国の2020年の「预制菜」の規模は4220億元前後(出荷口径)に達し、将来的には兆元規模に達する見込みだと紹介しました。
広東省は「预制菜」の専門企業を建設し、財政的に「预制菜」産業の発展を支援し、条件に合った「预制菜」プロジェクトが地方政府の特別債券を申請することを許可するよう求めています。
ポストコロナの時代だからこそ、人々の消費習慣は一変し、「预制菜」は消費者の間で大流行し、下降気味であった生鮮食品企業に衝撃を与え、略奪の態勢となったのです。
スマートフォンはもう売れない?”グリーンエネルギー”が新たなトレンドに
CINNO Researchによると、2022年上半期の中国市場のスマートフォン販売台数は約1億3400万台で、前年同期比16.9%減少し、2015年以来最悪の上半期販売台数を記録しました。
今年の618大セールでも、現在の勢いを変えることはできず、6月の中国大陸市場のスマートフォン販売台数は5月の前月比21.3%増でしたが、前年同月比では18.6%減となり、2015年以来最悪の6月単月販売台数を記録しました。
なぜスマートフォンが売れなくなったのでしょうか?背景には供給側と消費側の双方に理由があるようです。
供給側では、コロナウイルスの蔓延がサプライチェーンと販売ルートに大きな影響を与え、メーカーの出荷は何度も減少しました。また、昨年から中国産携帯電話は値上げされており、以前は小米ではスマートフォンの価格を以前の価格1999元(約4万円)に抑えられなくなりました。
7月29日、国際データ会社(IDC)の携帯電話四半期追跡報告によると、2022年第2四半期の中国スマートフォン市場の出荷台数は約6720万台で、前年同期比14.7%減少しました。
上半期の国内スマートフォン市場の出荷台数は約1億4000万台で、前年同期比14.4%減少ししています。
さらに重要なのは、アップルでも国産携帯電話でも、モデルチェンジごとに革新が少なくなり、折りたたみ画面、高画質画面、急速充電、高性能カメラなど、消費者の新鮮さを求める欲求を満たすことができなくなりました。
また、消費者はコロナウイルスの蔓延により、より理性的で実務的な消費を求めるようになりました。自宅での隔離期間に新しくスマートフォンを買い換えようという人は少ないようで、スマートフォンの交換サイクルは過去1年以上から30カ月以上に延長され、2年以上交換しない人も増えました。
その一方で、中国で今盛り上がっているのはグリーンエネルギー家電です。現在、世界でもっともグリーンエネルギーに投資している国は中国で、2022年の全世界投資額見通し1兆4400億ドルのうち、3割を中国が占めています。
中でも盛り上がりを見せているのが新エネルギー自動車で、2022年6月末現在、中国全土の自動車保有台数は3億1000万台に達し、うち新エネルギー車は1001万台になりました。
公安部が6日に発表したデータによると、2022年6月末現在、全国の自動車保有台数は3億1000万台に達し、うち新エネルギー車は1001万台となっています。
今年4月、比亜迪高調は世界初の燃料車生産停止の完成車企業となり、新エネルギー自動車分野に専念すると発表しています。
上半期全体では、比亜迪は633777台の新エネルギー車の販売台数で前年同期比317.6%増加を記録しました。
上半期の新エネルギー車の販売台数が急騰したのは、ロシアとウクライナの戦争が大きく関連しています。戦争勃発後、国際原油価格が急騰し、ガソリン車を選ぶことは大きなリスクを抱えることだと認識されるようになりました。
若者の”金”貯金
中国では近年、若者の間で「金豆」貯金が流行っています。「金豆」とは小さな金の粒で、経済が安定しないこの時代に価値の変わらない「金」を貯金しようという若者が増えているのです。
小紅書で「金豆」を検索すると、84882編もの投稿が見られます。
「2021中国ゴールドジュエリー消費調査白書」によると、25~35歳の消費者層の割合は75%に達しており、金市場の現在の主役は若者であることがわかります。
先日、「メイベリンが中国のすべてのオフライン店舗を続々と閉鎖する」というニュースが流れました。
この2年間、20、30代に大人気ブランドであったレブロン、BOURJOIS、リンメル、Za、メイベリン、イニスフリーなど有名ブランドが続々倒産、撤退などの危機に追い込まれました。
中国女性の間では、「口紅を一本買うより金を一粒」という考え方が多くなってきていることもあり、「” 盛世买股票,乱世买黄金 “(いい時代は株を買い、わるい時代は金を買う)」という言葉はまさにコロナ禍の若者の消費活動を表現しています。
まとめ
新型コロナウイルスの影響を受け、中国では人々の消費活動に大きな変化が見られるようになりました。
小さな買い物をするよりも金を貯め、ザリガニを食べに出かけず家でコーヒーを煎れ「预制菜(即席飯」を楽しむようになりました。
スマホの買い替えに飽きた人々はクリーンエネルギー家電や新エネルギー車に興味津々..。
中国人の消費は理性的で実務的な傾向に変わりつつあります。
経済の回復に伴って、「勉強」や「仕事」の質を上げるための消費も顕著になり始めました。
コロナを経験した現在の中国人にとって、仕事の安定、財布の管理、環境意識の3つがこれからの消費のキーパーソンになっていくと見られます。
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